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長引く咳について

咳の診断・治療について

基本的に咳や鼻汁の症状は細菌・ウイルス・化学物質等の侵入から身を守るための正常な防御反応です。しかし日常的に私たちはそれを経験することで、つい軽く捉えがちになる傾向があります。中には注意すべき咳や鼻汁もあるので、正しい診断と治療が重要となります。

咳は一回につき4キロカロリーを消費すると言われています。計算上、100回咳をすればケーキ1個分のカロリーに匹敵するほど、体にとってはかなり負担のかかる状況です。意外と甘く見てはならない症状です。

特に強い症状が出ている場合や慢性的な症状でお悩みの方は、早期に正しい診断を受ける必要があります。今回はこのような長引く咳や鼻汁について詳しくご説明します。

どんな病気?

本来であれば自己防衛のために起きる症状ですが、アレルギー等により引き起こされる咳や鼻汁は意味合いが異なります。花粉などのアレルゲン物質や体内に異物が入ることで局所的な炎症が起こり、呼吸器を中心に過剰な反応が出ます。

問題はそれが長期間続く、慢性化しやすいという点です。
 ・夜中眠れない
 ・ごはんが食べられない
といったような全身状態にもかかわる影響が起きます。

アレルギー性疾患を持つ患者数は約50年前から急増しており、例えば花粉症によるアレルギーで鼻炎や結膜炎を患う人は今や5人に1人と言われる規模にまで膨れ上がっています。慢性的な咳や鼻汁をコントロールすることは重要ですが、実際の治療にあたっては複雑多岐に渡ります。モルヒネと似た薬の使用により肺炎を悪化させるなど場合によっては大きな弊害を伴うこともあるので、薬の正しい組み合わせ等の専門知識と判断が求められます。

どうして起きるの?

一般的には鼻や喉といった呼吸器系の粘膜に外部からウイルスやアレルゲン等が接触することで炎症反応が起き、それに伴い中枢神経からまず「危険ですよ!」という信号が送られます。その信号を受けた肺などの呼吸器が瞬時に反応することにより、咳やくしゃみといった反射が起きるのが咳のメカニズムです。

また炎症が進むことで、痰や鼻汁などの滲出性物質が量産されます。特にアレルギーは体が過剰な反応をしてしまうことが特徴的です。

長引く咳としてアレルギー由来のものは「気管支喘息」が代表的です。気道の炎症や過敏性、喘鳴、気道の閉塞傾向などがあります。体にとっては非常に負担が大きく、止めようと思っても止まらないという状態で慢性化しやすいものです。

また、呼吸器系以外の他の臓器が原因となり咳が慢性化する例もあります。
例えば胃液が口腔内に逆流して咳を引き起こすなど、慢性の咳と一口で言っても要因が複雑に絡み合っていることが実際の診療現場には多いです。

どんな種類があるの? 

咳を専門用語で「咳嗽(がいそう)」と呼びます。まず持続期間によって咳は大きく分けて3つに分類されます。

 ● 3週間未満で治まる程度の急性期咳嗽
 ● 3週間以上~8週間未満の遷延性咳嗽
 ● 8週間以上続く慢性咳嗽
に分けられます。

「急性期咳嗽」はいわゆる風邪や上気道炎が大半を占め、その多くは感染症により引き起こされます。安静・栄養・抗生剤など、肺炎を含めて適切な治療で経過治癒するものです。

一方の「遷延性咳嗽」と「慢性咳嗽」は長引く咳として特に注意が必要なものです。

注意すべき“長引く咳”にはどんな病気が考えられるのか?

「遷延性咳嗽」と「慢性咳嗽」において、特に患者さんが多いものは以下の病があげられます。

気管支喘息(きかんしぜんそく)

息を吐き出すことがしにくくなる特徴があります。聴診器で喘鳴を認め、患者様は胸に閉塞性を感じやすく圧迫されているような感じを受けます。夜から朝方にかけて呼吸困難になるのが特徴的で、重症化すると睡眠障害・食欲低下など全身状態の悪化につながります。場合によっては死に至ることがあるほどの怖い疾患です。

咳喘息(せきぜんそく) 

気管支喘息と並んで多い疾患です。気管支喘息と似たような症状ではありますが、喘鳴や呼吸困難を伴わないという特徴があります。原因となる背景は患者さんによってかなり異なると考えられており、気道局所の痙攣が原因とされています。

アトピー咳嗽(がいそう)

原因となる明白なアレルゲンに感受性を持った患者さんに多い疾患です。エアコンの空気・たばこの煙・精神的な負担・運動などが主な原因です。中年の女性などに多くみられる特徴があります。

感染後咳嗽(かんせんごがいそう)

呼吸器の感染症が起きた後、通常3週間以内に終わるような咳が継続してしまう病態です。ただし自然軽快する傾向があります。

胃食道逆流症(いしょくどうぎゃくりゅうしょう)

胃酸や胃の内容物が胃から食道側に逆流することにより引き起こされる一連の病気です。その症状のひとつとして慢性の咳が現れます。会話・起床による刺激・食事を摂ることによって悪化しやすい特徴があります。

心因性咳嗽(しんいんせいがいそう) 

文字通り精神的な負担や感情の変化などにより、脳神経に刺激を与えることで起きる咳の反射です。固定した症状ではなく、睡眠中は咳が止まる傾向があります。ストレスを感じるときなどに起きやすい特徴があります。

どうやって診断するの?

いずれも問診から詳しくお話をお伺いして診断いたします。
既往歴・家族歴や聴診器による喘鳴確認などを含め、総合的に診断いたします。

気管支喘息(きかんしぜんそく)

痰が奥に詰まるような音のする咳が多い傾向があります。ゼーゼーヒューヒューといった喘鳴を伴うことが特徴的なため、例えばスパイロメトリーという呼吸機能検査を用いて診断いたします。さらに血液検査を行い、アレルゲンを特定することでより詳細な診断を行います。問診にて気道の過敏性があるかどうかも合わせて検討します。実際に患者さんの息を吐く様子を診て、機能低下がないかなど慎重に判断いたします。

咳喘息(ぜんそく)

β刺激薬という気管支拡張薬を用いて症状が改善する(有効な)場合、診断の根拠となります。

アトピー咳嗽(がいそう)

咳喘息と違い、β刺激薬が効かないため他のヒスタミン受容体拮抗薬やステロイドなどが有効です。これらの診断は難しく、日本呼吸器学会の咳嗽に関するガイドラインにおいても、まずは治療して総合的に診断することになっています。このような治療と診断が並行して行われるものを治療的診断と言います。

感染後咳嗽(かんせんごがいそう)

風邪や上気道炎などの感染症を起こした時期、そこから持続している一連のものなのかなどの詳細な問診をすることが重要となります。胸のレントゲンなどを確認し、結核など他の長引く咳を引き起こす病気との違いを明確にしながら総合的に診断いたします。傾向として乾いた咳は感染後咳嗽に多い特徴があります。

胃食道逆流症(いしょくどうぎゃくりゅうしょう)

病歴や症状などの問診から疑い、こちらも治療的診断として胃酸の分泌を抑制する薬、胃炎を改善する薬などを用いることで胃液の逆流・咳の改善状況を診て診断いたします。

心因性咳嗽(しんいんせいがいそう)

他の病気の可能性を否定した上で総合的に診断いたします。

年齢によっても咳の種類が分けられる傾向があります。問診は非常に重要です。咳の種類によって治療法が変わりますので、咳を正しく見分けるためには受診していただき、総合的に診て判断する必要があります。

どういう治療をするの?

気管支喘息(きかんしぜんそく)

吸入ステロイドが主体です。少量のステロイドを気管支に吸入し、気道粘膜の炎症を消退させることが重要です。他に気管支拡張剤の吸入や内服薬としてロイコトリエン受容体拮抗薬・テオフィリン・ステロイドなどがありますが、症状の重さによってその使用を判断いたします。

咳喘息(せきぜんそく)

β刺激薬(気管支拡張剤)が中心です。

アトピー咳嗽(がいそう)

ヒスタミン受容体拮抗薬という一般的に抗アレルギー剤と呼ばれる薬を使用することが中心ですが、吸入ステロイドを使用するケースもあります。

感染後咳嗽(かんせんごがいそう)

咳反射を引き起こす指令を止めるための中枢性鎮咳薬などが用いられます。また、漢方薬の麦門冬湯(バクモンドウトウ)の高い有効性が認められており、日本呼吸器学会の咳嗽に関するガイドラインにも同薬が掲載されています。

胃食道逆流症(いしょくどうぎゃくりゅうしょう)

胃酸分泌を抑制する薬、胃炎改善の薬などを用いて治療します。

心因性咳嗽(しんいんせいがいそう)

当院の治療の方針に関わる治療法になりますので後述をご覧ください。

また、アレルギー性鼻炎の治療としては、日本では抗ヒスタミン剤が主体です。ただ症状が重く改善が難しい方は、海外ではステロイド点鼻薬の使用も有効とされています。副作用はほとんど出ないのでお悩みの方はぜひトライしてみる価値はあると思います。

当院の診療・治療の方針

原則として、見逃してはならない疾患・重症化して死に至りうる気管支喘息など、西洋医学的に率先して治療したほうが良い症状は当然ながら西洋医学に基づいた治療を行います。当院は学会のガイドラインに則した治療法を行っています。

ただし西洋医学的な治療を行っていても症状がなかなか良くならない方が多いこともまた事実です。その際は必要に応じて当院は漢方や鍼灸なども含めた東洋医学に基づく治療を合わせて行っています。漢方薬の中には西洋医学的に研究が行われた結果、効果や有効性が実証されているものもたくさんあります。

西洋医学的な治療にも高い効果実績を持つ東洋医学

咳の治療に麦門冬湯(バクモンドウトウ)を処方された経験がある患者さんも多いのではないでしょうか?
西洋医学的な治療の現場においても、今や漢方薬や鍼灸などが積極的に取り入れられており、その高い効果が期待されています。

例えば気管支喘息でステロイドを内服せず、柴朴湯(サイボクトウ)を使用して有効性が確認されたという論文もあります。アレルギー性鼻炎については小青竜湯(ショウセイリュウトウ)も同様に西洋医学的に有効性が研究されています。

咳を止める気管支拡張剤のひとつにエフェドリンという物質がありますが、実は生薬の麻黄(マオウ)から作られています。麻杏甘石湯(マキョウカンセキトウ)は慢性的な咳の治療に有効とされています。このように西洋医学的に開発された薬の中には実は漢方の生薬が使用されているケースは実際よくあるものです。免疫力を補い、体を潤しながら咳を止めるといったような対処法は東洋医学ならではのアプローチです。

治療薬は専門医の診断のもと正しい服用を―

小児には相性が良いとされる麻黄(マオウ)も、ご高齢の方に使用すると尿閉や血圧上昇などの副作用が出るケースもあります。漢方薬と言えどもむやみやたらに使用するといろいろな副作用が出る可能性があるので注意が必要です。組み合わせは複雑多岐に渡りますので専門医の診断のもと使用する必要があります。

西洋薬も当然ながら副作用に注意が必要です。必ず服薬指示はまもってご使用ください。

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