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肥満

肥満の治療意義を知っていますか?

はじめに

肥満は今や日本人の現代病であり、さまざまな病気に深く関わる病であり症状、病です。原因が明らかなものは「二次性肥満」と呼びます。別の病気が先にあり、肥満はその後に続発して起きたものという考え方です。

※二次性肥満
内分泌性の肥満で、甲状腺機能低下症・クッシング症候群・女性に多い多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)・遺伝性の肥満・ステロイド性の薬剤性肥満といったものがその代表例。あきらかに二次性の原因が疑われるものは肥満そのものの治療ではなく、その源にある疾患や薬剤などの除去治療が必要となります。

一方、原因をひとつに確定できない肥満が一般的です。

今回は原因がひとつではない「肥満」に焦点を当ててお話します。例えば食べ過ぎ、運動不足などの生活習慣の乱れが深く関わっているものを「単純性肥満」と呼びます。ここではこの単純性肥満をテーマにお話します。

どんな症状なの?

「肥満」と「肥満症」とで大きく捉え方が違います。

●肥満

肥満は単純に太った状態、つまり肥満の症状そのものを指します。

●肥満症

肥満症は、単なる肥満ではなく、治療を必要とすべきレベルの肥満を指します。肥満に起因ないしは関連する健康障害を合併するか、もしくは臨床的にその合併が将来的・潜在的に予測される場合で、医学的に減量を必要とする状態を指します。メタボリック症候群を誘発する最初の段階とも言えます。その後の経過を長期的にみる視点も必要となります。

BMI数値も25を超えている方などは肥満や肥満症を考えるひとつの指標として有効です。目に見えてわかる外見的な太り方と内部の太り方とはまた違うものですから要注意です。この内臓型肥満症は、30歳未満の人でも多く見受けられます。二次性肥満のチェックが必要な場合、ホルモンなど血液検査を行います。

どうして起きるの?

●運動不足
●睡眠不足
●睡眠障害(途中で目が覚める・寝入りが悪い・朝方早く起きやすい等)
●生活のリズムの乱れ
●過剰なストレス

などが複合的に関係していると言えます。

今までの常識では食べ過ぎや高カロリーなどが肥満の中心的な原因とされてきましたが、もっと重要な観点として生活リズムの乱れや腸内細菌のパターンが肥満を引き起こしているという事実がここ数年の研究で明らかにされてきました。

少し専門的な話にはなりますが、皆さんも悪玉菌・善玉菌という言葉を聞いたことがあるでしょう。腸の中で悪さをしている悪玉菌で代表的なものにフィルミクテスという細菌群があります。一方、善玉菌にはバクテロイデス細菌群があります。腸内の細菌群が多くある中で、この二種はどういう食べ物を食べているか、どういう生活を今までしてきたかによって個人個人のお腹の菌のバランスをかなり変化させるものです。どちらかというと自然に近いような生活をしている人はバクテロイデスが増え、食物繊維をあまり摂らないような高カロリーな食事に偏りがちな都会型の人間はフィルミクテスが多いという増え方をします。フィルミクテスが多いほど肥満になり、逆にバクテロイデスが多い人は痩せている傾向が高いとされています。

今まで通説だったカロリーの過剰摂取という話だけにとどまらず、肥満は腸内細菌の違いに大きな影響を受けるという見解に徐々にシフトしつつあります。つまり食物繊維が多い食生活を送ることは善玉のバクテロイデスを増やすことに繋がり、肥満の治療効果に影響を与えることに繋がると言えます。

どんな病気が考えられるか?

肥満症の診断は、肥満に伴う以下の11種のうちの合併症を併発していないかを見極めることが非常に重要です。

●糖尿病を含めた耐糖能障害
●高脂血症を含む脂質異常症
●高血圧
●痛風を含む高尿酸血症
●冠動脈疾患
●脳梗塞
●非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)
●月経異常・不妊
●睡眠時無呼吸症候群
●運動器疾患
●肥満関連腎臓病

どうやって診断するのか?

肥満症は、

① BMI(Body Mass Index)が25以上の数値
② 肥満を起こす基礎疾患の除外
③ 上記に記した11種の合併症のうち少なくとも1つに当てはまる
④ 内臓脂肪型肥満であること

以上4つの条件を満たす必要があります(参考:「日本肥満学会」が2011年に出した『肥満症診断基準』)。

ちなみに内臓脂肪型肥満であることを判断することは難しいことではありますが、腰の周囲計が男性は85cm以上、女性は90cm以上であればその可能性が高いと言われています。

どういう治療法があるのか?

肥満に対する治療法として、一般的には、運動療法、食事療法、認知行動療法、薬物療法などがあげられます。

●運動療法

1分間あたり心拍数120程度の少し息が上がる程度の運動が良いとされています。Walking・Cycling・Swimmingといった有酸素運動が一番効率よく体重を減らせると言われています。

●食事療法

肥満対策に2015年、厚生労働省が打ち出した方針には、今まであった摂取カロリー制限が削られました。中でも最近声高に言われてきていることは糖質(炭水化物)です。糖質をどう摂るかによって肥満とどう密接に関わるのかを知ることはとても重要です。食物繊維が多いお米より、パンなどの炭水化物を摂るほうが同じカロリー分を食べても太りやすくなります。また時間がないことを理由にファストフードを多く摂る人は、太り方もファストになるものです。食物繊維は人体に直接的な栄養を与えるものではありませんが、糖分と一緒に摂取することで急激な血糖上昇を防ぐ効果に一役買っています。咀嚼回数を増やすことは満腹感を得ることに繋がりますから過食を防ぐために有効です。慌ただしくご飯を食べる人の方が太りやすいという傾向は、現代人の忙しさが肥満を呼んでいるという理由の一因になり得ます。このように食事の摂り方を少し意識するだけでも、肥満を改善するヒントが多く見つけられます。

●認知行動療法

ひとつの例としては患者さんご自身で自分の体重をこまめに記録していただく手法です。体重日記としてデータ変化を可視化し、自分の頭に認識させる療法です。比較的良い成果となる方は多いです。まずは現状を認識することからスタートするということは、血圧治療と似ているところがあります。

●薬物療法

肥満に対して西洋薬の薬はまだ開発途上です。マジンドールという薬もありますが、BMIが35を超える方でかつ3か月という限定された期間でしか使用できません。

漢方においては防風通聖散(ボウフウツウショウサン)という薬があります。これを肥満に用いるということは中国で見出されたものではありますが、現代においても有効で科学的にも効果があることはいろいろな論文報告から見てとれます。食事・運動療法だけ行った患者群に比べて、防風通聖散を用いた患者群は半年間で約3.5kgの減量・内臓脂肪量の減量・腰回りのサイズを減少させることができたと報告されています。

「日本肥満症治療学会」の治療ガイドライン委員会が2013年に出した『肥満症の総合的治療ガイド』の中に防風通聖散の記載があります。防風通聖散の有効性について白色脂肪組織の脂肪分解作用と褐色脂肪組織の活性化による減量効果、それに加えて交感神経を介したノルアドレナリンの効果増強による減量効果などの論文が紹介されています。

当院の診療の方針

●睡眠の取り方
●栄養の摂り方
●昼間の時間の使い方
●生活の活動度

など先ず、生活習慣の把握から始めます。

肥満はインスリン抵抗性を生み出します。血糖を下げるインスリンを体内に持っているのに、そのインスリンが正常に働けない環境を肥満が作り出すのです。その結果、糖尿病を発症・悪化させ、動脈硬化などの深刻な合併症までも促進します。メタボリック症候群や高血圧を含めれば、のちのち雪だるま式に病を悪化させる源のひとつとなり得ますから、それを食い止めるためにも肥満の早期治療は大切です。

また外見的な問題という狭い考え方だけでなく、広い意味でのエイジングケアとして捉えることが必要だと考えます。つまるところ、予防医学のひとつに肥満があります。食事療法・運動療法などいろいろ行っても上手くいかない方が実際の診療現場には多くいらっしゃいます。代謝を促進するための麻黄(マオウ)という生薬や、腸内の菌環境を大きく変化させると期待されている大黄(ダイオウ)など漢方生薬には腸内細菌含めて身体の代謝そのものを変える根源的な治療の可能性が秘められています。

実際に肝臓がんに有効と報告のある大黄を含んだ茵蔯蒿湯(インチンコウトウ)は悪玉菌を減らす可能性があると考えられ、肝臓がんを減らす処方も含めて、漢方薬が肥満に貢献する可能性は十分あると思います。当院では必要があると感じた患者さんには積極的に防風通聖散や大柴胡湯(ダイサイコトウ)、女性の場合は桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)など種類豊富に対応ができますのでぜひお気軽にご相談ください。

ただし、防風通聖散については他の漢方薬に比べて、どちらかというと西洋薬に近い働き方をするので副作用が出る場合があります。約5%の方に下痢が、約1%の頻度で肝障害が起きる可能性があるものですから、漢方の処方には知識を豊富に持つ専門医に相談をするほうが無難です。ものによっては保険漢方では適用できないものもあり、自由診療の煎じ漢方等でそれらの副作用を減らすような匙加減を行うことも可能です。逆に肥満を改善する麻黄の成分を増やすなどの加減も自由診療であれば自由自在にできます。肥満でお困りの方、今までの治療で満足できなかった方はぜひ私たちにご相談いただければと思います。

その他

フィルミクテス細菌群の中にアリアケ菌というのがあります。アリアケ菌が肥満を引き起こし、さらには肥満だけでなくガンも引き起こしやすいという可能性が昨今の研究で見えてきました。昔から“肥満の人はガンになりやすい”と医学的に論じられてきましたが、肥満とガンを繋ぐ橋渡しをしているのがこのフィルミクテスという悪玉腸内細菌にあるという可能性は驚きを持って伝えられました。肝臓がんの発症にもフィルミクテスの菌たちが悪さをしているという報告は少しずつ出てきています。

肥満と漢方にまつわる報告には、『遺伝子変異を伴う肥満の患者さんに対する防風通聖散の効果』を調べた1998年の比較臨床試験があります。その結果は内臓脂肪を大きく減少させ、また糖尿病になりやすい状態を改善したというものでした。もうひとつ、別の処方ではありますが同様の報告で肥満症に対する比較臨床試験(1998年)において防己黄耆湯(ボウイオウギトウ)という漢方薬が有効であったとする論文も発表されています。

また、肥満が老ける原因の一つになることも徐々に明らかにされてきており、AGE(Advanst Glycation Endproduct:終末糖化産物)の数値が上がることに関連があると言われています。AGEはブドウ糖がタンパク質と結合したり、ブドウ糖が脂質とくっつくことで生まれます。これが体の中に蓄積すればするほど肌や血管の劣化するスピードが速まります。つまり肥満があるとAGEが体の中で蓄積しやすい状態になり、今の段階ではそれほど影響はなくとも、塵も積もれば山となり、将来的には早死につながる可能性も考えられます。肥満治療の本当の意義は5年後10年後を見据えた先にあることを、ぜひ皆さんにはもっと知っていただきたいのです。漢方は特にそういう根源的な治療を実現する可能性を大いに秘めているものです。

肥満症は治せるものであれば早いうちに治したい病気です。タバコと同じで、止めるのが早ければ早いほど身体全体に良い結果をもたらす可能性が高まります。かといって、遅いからと言って決して手遅れということもありません。自分の生活全般を振り返る良いきっかけになるだけでなく、広い意味でのエイジングケアとしてもぜひ目的意識高く治療に前向きにお越しください。

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