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高脂血症

患者さんの人生そのものに大いに関わる「高脂血症」

コレステロール異常と言えば一般には高脂血症が有名ですが、最近は善玉コレステロールと呼ばれるHDLコレステロールが減少する状態(低脂血症40mg/dl未満)も含めて「脂質異常症」と呼ばれるようになりました。ただし一般的な認識としては高脂血症の治療が主ですので、今回は「高脂血症」をテーマにご説明します

どんな症状が出るの?

大きく二種に分かれます。

高脂血症そのものによる症状

さらに症状が軽症と重度とで分かれます。

● 軽症の場合
 ご自身は無症状がほとんどです。人間ドックや健診等で初めて「高脂血症」と指摘されて分かるレベルです。

● 重度の場合
 皮膚にできる黄色い腫瘤(黄色腫)がアキレス腱やまぶたに認められることがあります。

高脂血症の合併症による症状

● 冠動脈疾患
 心筋梗塞による突然死が起きる可能性が高くなります。原因が単なる高脂血症だけでなく、診断された段階で糖尿病・慢性腎臓病・脳梗塞・末梢動脈疾患のいずれかの疾患を併せ持つ場合、10年経過した時点で50人に1人が他界するというデータがあり決してあなどれません。

● 末梢動脈疾患
 手足への動脈に閉塞や狭窄が起きる場合が多い。

● 急性膵炎
 コレステロールのひとつ、中性脂肪が500mg/dlを超える高値になると急性膵炎を起こすリスクが高まります。急性膵炎は緊急疾患のひとつで、集中治療室に入り処置を受けるべき生命に関わる病です。引き金として高い頻度で高脂血症があげられます。

どうして起きるの?

理由は大きく二つあると考えられています。

● 遺伝性
 家族や親族内にコレステロール値の高い方がいらして、その遺伝子を持っているケース

● 生活習慣
 運動不足や食事の兼ね合いで起きるケース

どんな種類があるの?

● 原発性

家族性高コレステロール血症など遺伝要素が深く絡みます。

家族性高コレステロール血症とは LDLコレステロール値が高くなりやすく、若い年齢の方でも心筋梗塞や冠動脈疾患等を引き起こすことが特徴です。LDLコレステロール値が高いほど、心臓への血管が動脈硬化を起こしやすくなります。症状が軽いタイプも含めると現在200~500人に1人はいると言われている病気です。意外と多いので要注意!無治療の場合、約6割の方が心臓の病気で他界すると言われています。もちろん治療が必須ですが、放置し続けると平均死亡年齢は男性が56歳、女性は68歳というデータがあります。

● 続発性

いわゆる生活習慣病のひとつで、運動不足や食事内容による影響が大きいものです。原発性に比べると続発性の患者さんの数が圧倒的に多いです。

どんな病気が考えられるの?

脂質異常症による高脂血症が多いのですが、 腎臓のネフローゼ症候群やホルモンの甲状腺機能低下症など他の病気が隠れているケースもあります。

どうやって診断するの?

厳密には12時間以上絶食し、採血をします。 診断基準としては糖尿病などの合併症の有無で細かく異なりますが、原則としては以下の通りです。

 ・LDLコレステロールは140mg/dl以上
もしくは
 ・中性脂肪(TG)150mg/dl以上

合併症がない場合、一般的にはこちらの数値で診断がつけられますが、原因が腎臓病にある場合もあるため、尿検査で腎臓疾患を否定することも大切です。

 ・中高年の女性の方は甲状腺検査も合わせて必要です。
 ・問診で家族歴を詳しくお伺いすることも重要です。

見た目だけではわからない高脂血症

肥満やメタボリック症候群など、見た目として太っているからと言って高脂血症に直結するわけでは決してありません。特に中高年の女性などはホルモンの影響でコレステロール値が上がる方もよくいらっしゃいます。甲状腺の問題だけでなく、他に病気がなくても年齢と共に単純にコレステロール値が上がることもありますし、痩せていても数値が上がる方などさまざまです。単純な病気でないからこそ注意が必要であり、詳細な検査が求められます。

どういう治療をするの?

治療の一番の目的は動脈硬化症の予防です。内服薬を用いれば血液検査上の数値としては速やかに改善します。 一時的な安心はすぐ得られるでしょう。むしろ大切なのは長い経過観察です。10年、20年後など患者さんの将来を見据えたときに、動脈硬化を予防することは非常に重要な目標です。目標達成のためにも普段の生活習慣の改善は必須です。

治療としての3つの柱

●食事療法

肥満対策を含めて検討します。

例えば
 ・夕食を摂る時間を寝る2時間前までにする
 ・夕食を朝・昼よりも多く摂らないようにする

いった毎日取り組みやすいことからスタートします。 糖・たんぱく・脂肪・ミネラル・ビタミンに加え、最近「6番目の栄養」と呼ばれ注目を浴びる食物繊維も意識して摂取することが望ましいです。本来、食物繊維そのものには栄養はありませんが、昨今、腸内細菌の研究が盛んに行われており、食事内容に食物繊維の摂取が少ない方は肥満症や高脂血症が起こりやすいと言われています。 つい直接的なコレステロールだけに目を向けがちですが、中性脂肪を下げるためには実は糖分の制限も必要です。特に果糖やアルコールを制限すると中性脂肪の数値は比較的下がりやすいものです。

●運動療法

運動には特に3つの「ing」が良いとされています。 Walking・Cycling・Swimmingの三種は特に効果的な運動と言われています。運動をするだけで善玉HDLコレステロールが上昇します。運動が動脈硬化予防に一役買っていることは間違いのない事実だと考えます。

●薬物療法

3か月以上食事療法や運動療法を取り入れても改善が乏しい場合は薬物療法を検討します。ただし、薬物療法を開始すると横紋筋融解症や肝障害の副作用が起こり得るため、定期的な受診や検査が併せて必要となります。LDLコレステロールが高い場合、一般にはスタチンという薬を用います。高脂血症による合併症のリスクが高い場合はEPA(イコサペント酸エチル)という薬を併用します。中性脂肪が高い場合はフィブラート系などの薬を用います。腎臓に障害がある場合はレジンという薬を用いる場合もあります。副作用の問題でさまざまな薬が使えない場合は、最近では抗PCSK9抗体という注射薬も登場しました。2~4週間に一度注射することでかなり効果が期待できるものです。他の薬が使用できない場合には検討する意味があると考えます。

昨今の高脂血症への“常識”が変わる治療現場の中で―

かつて厚生労働省は食事からのコレステロール摂取量の制限を提唱していました。具体的には成人男性は一日750mg、女性は600mgまでを上限値としていました。ところが2015年に発表された『日本人の食事摂取基準』において、厚生労働省はこの目標値を撤廃しました。これはアメリカをはじめ、諸外国でも同様の動きです。撤廃理由としては十分な科学的根拠が得られなかったことが挙げられています。つまり、食生活の一部を改善しただけでは高脂血症は改善しにくいという結論に辿り着いたわけです。運動や他の生活習慣の改善などを広く含めての見直しが大切ということですね。

とはいえ、年末年始などの暴飲暴食などでコレステロール値が極端な悪化をみせる患者さんを今までも多く経験しました。短期間に限れば急性膵炎の予防など、食事制限は大きな意味を持っているはずです。決してやみくもに食事摂取して良いというわけではないのでその点はくれぐれもご注意を―

当院の診療方針

基本的には「日本動脈硬化学会」のガイドラインに沿って治療を行います。 『動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症治療ガイドライン』を用いて検査や指導を行います。 例えば近年は
 ・過食を控えて標準体重を維持する
 ・魚類や大豆製品の摂取を増やす
 ・アルコールの過剰摂取を控える
 ・有酸素運動を薦める  など

といったものが一般的ですが、各個人で脂質異常症の背景はかなり異なるものですから、食事療法・運動療法含め、当院のスタッフが適切に指導バックアップいたします。

当院では漢方薬を使用するアプローチも

高脂血症に有効な漢方薬があります。 シャボン玉の「シャボン」の語源はサポニンという言葉ですが、これは良質な油の名前です。サポニンが含まれる生薬としてニンジンサポニン・サイコサポニンなどがあり、それぞれを含む生薬の薬用人参、柴胡(サイコ)などが高脂血症に有効と言われています。 中でもサイコサポニンを含む大柴胡湯(ダイサイコトウ)は高脂血症に有効であることが知られています。(1991年の論文・比較臨床研究) その他、防風通聖散(ボウフウツウショウサン)を肥満症の方に合わせて処方するとコレステロール値が下がるといったケースは、実際の診療現場には多く経験します。

その他

高脂血症治療には複数の視点が必要です。 例えば糖尿病を合併する患者さんは糖尿病のコントロールが良くなると、中性脂肪の値が改善することが多いです。つまりひとつが悪くなると連鎖的に悪影響を与えますが、ひとつ改善すると高脂血症も改善されるという例はよくあるものです。メタボリック症候群や生活習慣病の方は特に単発の病ではなく、複数の病気が同時進行している可能性がありますから、諦めずにひとつひとつ根気強く治していくことで一手を打つことができます。

高脂血症などは明確な効果という点で、西洋薬の力が大きく発揮されるものですが、漢方薬も決して引けを取らないものです。大黄(ダイオウ)という生薬について言えば下剤の効果がありますが、高脂血症や肥満の方に対しては下剤効果以外に腸内環境を大きく変化させる効果があるのではという研究が最近進められています。科学的証拠(エビデンス)としてはまだ確立されていない状態なのでまだ断言はできませんが、腸内細菌の種類の違いによって動脈硬化が進むことが科学的に解明されてきています。これからの研究が大いに期待されている分野であることは間違いありません。

高脂血症は一生付き合わなければならない病―
だからこそ、ご自身に必要な情報を正しく捉え、治療に真っ直ぐ向き合う姿勢が大切

 高脂血症のボーダーライン上にある方はかなり多くいらっしゃいます。自覚症状がないからこそ怖い病気なのです。「詳しく調べてみたら家族性だった」とわかるケースも決して少なくありません。早めに気づき治療を始めたことで幸いにも大事に至らないケースもあれば、長きに渡る治療を億劫に思い途中で止めてしまわれる患者さんも残念ながら少なからずいらっしゃいます。家族性の場合はどうしても長期間、薬を飲む必要があります。根気が必要な治療である一方、食事の摂り方や運動の仕方などちょっとしたコツを知ることで驚くほどの改善につながることがあります。改善が見込めれば必要な薬の量も上手くコントロールできる可能性が広がります。患者さんの人生そのものに大きく関わる病気ですから、決して軽く考えずぜひ治療に真っ直ぐ向き合っていただきたいと切に願います。

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