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不妊症

不妊症治療に広く用いられる東洋医学 

近年、不妊に悩む患者さんは増え続けています。非常にデリケートな問題ゆえに患者さん側の抱える精神的負担は想像をはるかに超えるものです。患者さんの年齢や体質的な問題に要因の一端が見つかるケースもあれば、原因不明で長年治療を続けられている患者さんもおられます。そこで、不妊症治療の現場において、先人たちの知恵が凝縮された漢方や針灸が持つ効果に今、あらためて注目が集まっています。

不妊症はどんな状態なの?

不妊症は妊娠を望み、1~2年以上夫婦生活を営んでも妊娠成立に至らない状態を指します。日本では「2年以上」を不妊症のひとつの定義としていますが、欧米ではそれより短い「1年以上」で定義しています。数値に幅があるものの、日本では適齢期のカップルの約2~4割が不妊症と言われており、治療法も多様化しています。

どうして起きるの?

女性の場合、35歳以上で妊娠率は低下すると言われるほど年齢の関与は非常に大きいものと考えられています。卵子の細胞活性が加齢に伴い低下してゆくためです。また、さまざまな検査を行っても原因不明と診断されることが約2割を占めると言われています。不妊症の原因は女性側だけではありません。その4~5割にあたる約半数は男性側にあります。

東洋医学においては男女ともに

 ●身体の冷え
 ●栄養の質・量のバランス不良
 ●肥満
 ●やせすぎ
 ●毛細血管レベルの血流不良(瘀血:オケツ)
 ●精神的負荷
 ●胃腸障害の有無
 ●運動不足

なども原因として重視します。

特に血流については治療の大きなテーマのひとつと捉えています。西洋医学的な観点においては「原因不明(特発性)」と診断されるものの中にこれらが紛れ込んでいるケースも実際には多く見受けられるものです。

また社会的な問題としては、晩婚・晩産化、ダイエット指向等の背景も色濃いものです。加齢に伴い妊娠成功率が減少するため、現代の晩婚・晩産化による不妊症治療はますます重要度が増しています。人口減少とも深く関連し、個々人の治療のみならず、社会的な側面としてもインパクトがあります。厚生労働省の人口動態統計によると、日本女性の初婚年齢は1985年の25.5歳から2015年では29.4歳に延び、初産年齢は26.7歳から30.7歳とそれぞれ高年化しました。直近30年間で第1子出生時の平均年齢は4歳も高くなってきている状況がわかります。

また、一気に数kgのダイエットをした後には、排卵機能の障害が起こり、無月経が続く患者さん(体重減少性無月経)も意外と多くいらっしゃいます。中には体重を元に戻しても、排卵機能が数年間回復しないケースも決して珍しくなく、普段の食事の内容、量は決しておろそかにできない大切なものです。

どんな病気が考えられるの?

女性側としては主に

 ●排卵障害
 ●卵管性不妊
 ●子宮頸管粘液の異常
 ●子宮内膜症
 ●黄体機能不全などの着床障害

などが挙げられます。

中でも黄体機能不全は不妊症の原因の約3割を占め、自然流産を繰り返す患者さんの2~4人のうち1人に認められるほど大きな影響を持ちます。性ホルモンのプロゲステロンとエストロゲンの分泌不全により子宮内膜が十分な機能を果たせないことにもつながります。加えて、1割強のケースはさまざまな検査を行っても原因特定に至らないとされています。また、稀ではありますが、内科領域の甲状腺疾患、肝不全なども不妊の原因となります。

一方、男性側の問題としては原因不明であることが最も多いですが、

 ●造精機能障害(精子トラブル)
 ●性機能障害

などが隠れている場合があります。

どうやって診断するの?

先に述べた不妊症の定義にあてはまる状態であれば診断は可能です。しかしその原因については千差万別です。

 ●基礎体温の測定
 ●各種ホルモン測定

で排卵障害等をチェックします。超音波検査は子宮筋腫の有無など子宮・卵巣のチェックを行うためには必須な検査です。より専門性高い機器のある産婦人科での検査も併せて行うことをおすすめしています。また男性の場合は厳密には精液検査などを行う必要があり、泌尿器科や産科にてご相談いただくこととなります。

どういう治療をするの?

西洋医学の治療に関しての詳細は省きますが、クロミフェンなどの排卵誘発や人工授精のほか、子宮筋腫や子宮内膜ポリープ、卵管の通過障害などがあれば手術が行われるケースもあります。

また漢方薬には、西洋薬と同等もしくはそれ以上に不妊症に有効な場合が数多くあります。具体的には排卵障害、黄体機能不全などの着床障害、子宮内膜症、男性不妊が挙げられます。一方で、先に述べた手術が必要なケースなどについては漢方薬は無効です。

女性の不妊症患者さんに比較的多い黄体機能不全(プロゲステロンとエストロゲンの分泌不全・子宮内膜不全)に有効とされる漢方薬の代表選手は桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)、当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)、温経湯(ウンケイトウ)などが有名です。黄体機能不全の患者さんの約4割が桂枝茯苓丸で黄体機能の改善を認めます。さらに約3割の方が当帰芍薬散で、4割強の方は温経湯で妊娠成立したと報告されています。

子宮も卵巣も毛細血管の多い臓器です。毛細血管レベルの血流不全が妊娠成立のために非常に重要な鍵を握っています。産科の先生は子宮内膜の厚みを超音波検査などで診るものですが、厚みの少ない方には、毛細血管のレベルのトラブルも含まれているはずです。

5つの生薬で構成される桂枝茯苓丸は毛細血管の血流障害(瘀血)を改善する代表的な薬(駆瘀血剤)です。桂皮・芍薬は鎮痛や微小循環改善作用を持ち、桃仁には強力な血流障害を取り除く作用や消炎作用があります。茯苓には強心・利尿・精神安定作用、牡丹皮には消炎・解熱・殺菌作用があります。不妊症の原因のひとつに子宮内膜症がありますが、これらの生薬を用いることにより非常に高い効果を期待できることがわかります。ただし実際に妊娠が成立した後は、一部処方を変更すべき生薬もあります。専門的観点による注意も必要です。

当帰芍薬散は古来より「安胎薬」とも言われており、子宮の緊満感を伴う切迫流産にも効果があります。平滑筋という子宮収縮や卵管狭窄に関わる筋肉の収縮を抑制することで、高い作用を発揮することが認められています。

さらに、何度も流産を繰り返される患者さんには不育症という病が隠れている可能性があります。その場合は柴苓湯(サイレイトウ)が有効なケースが多いです。

不妊症治療は精神的負担も非常に大きく、その苦痛を緩和するためにも漢方薬を用いることがあります。八味地黄丸(ハチミジオウガン)に含まれる生薬のひとつは、山薬(サンヤク)と呼ばれるヤマイモです。ヤマイモは、妊娠率を上げるサプリメントDHEAとも深い関係があります。また、八味地黄丸は製造メーカーによっても効力が異なり、同じ八味地黄丸でもメーカー変更することで妊娠に至ったケースも報告があります。

不妊症治療においての漢方は、東洋医学に詳しい医師でなければ知らない知識も数多く存在します。知識豊富な日本東洋医学会の専門医に受診されることを強くおすすめいたします。

男性の不妊症には、科学的証拠(エビデンス)がある西洋薬は未だに存在しないのが現状です。漢方薬については、精子の運動率や濃度といった点で機能を高める論文が存在しますが、八味地黄丸・補中益気湯(ホチュウエッキトウ)などが研究に用いられるケースは多いものです。ほかに十全大補湯(ジュウゼンタイホトウ)、小建中湯(ショウケンチュウトウ)、柴胡加竜骨牡蛎湯(サイコカリュウコツボレイトウ)などがあります。

治療ペースについては個人差もありますが、35歳を超えている場合は西洋医学的な検査・治療に加えて早い段階で漢方治療を併せて行うことが重要と考えます。一般的には不妊治療においての漢方薬は、3年間続けて飲んだ方が良いと言われておりますが、実際には数か月飲んだだけで妊娠するケースもあれば長く飲み続けられている患者さんなど様々です。当院としても患者さんに薬によるトラブルなどが起きていないかなど慎重に判断しながら、東洋医学の治療を行っています。

当院の診療・治療方針

当院では保険適用から自費治療まで、幅広く取り扱っております。

ただし当院では不妊症についての超音波検査は行っておりません。基礎疾患の有無の確認が必要な場合は、産婦人科の受診をおすすめしています。同様に男性の不妊症の検査については泌尿器科かパートナーが受診される産科への受診をおすすめしています。

2、3年間の服用が必要な方もおられます。当院でも当帰芍薬散の短期服用で妊娠された方もいらっしゃいるように、実際には2ヶ月から半年で妊娠が成立するケースも多くあります。下痢傾向でやせている方、逆に便秘傾向で肥満の方など、体質改善を根本的に行わないと妊娠が難しいと考えられる患者さんの場合は1年以上の治療を要する場合もありますが、無節操な治療ではなく、あくまでもその時その時の患者さんの状態に応じて適切な処方をともに選択してまいりますのでご安心ください。

保険適応の漢方(エキス剤・粉薬)にはない煎じ薬の白朮散(ビャクジュツサン)などを用いた不妊治療も、当院では自由診療にて行っております。今まで他院での漢方治療が奏功しなかった患者さん、年齢を考慮し早期により高い確実性を求めた治療を行いたい患者さんには、煎じ治療をおすすめしています。当然ではありますが、患者さんご本人のご意向を第一に考え、治療内容についても都度ご確認いたしますのでお気軽にご相談ください。

また、妊娠成立後も安定期に入るまでは漢方の服用をおすすめしています。ただし、不妊治療のために飲んでいた薬の一部には、妊娠成立後にはやや不向きとなる漢方薬もあるため、処方の切り替えタイミングを見失わぬよう、原則としては定期的な受診をおすすめしています。産科と平行しての通院にはなりますが、漢方薬は胎児のためだけでなく、特に妊娠後期ほど辛くなる母体の症状(例:血圧上昇・尿蛋白など)の予防にも非常に有効です。

東洋医学はオーダーメイドの治療の色合いが強いものです。診療現場においては妊娠成立後に薬を変更したほうが良い患者さんや、処方を継続すべき方など人によってさまざまあり、処方も複雑多岐に渡ります。患者さん側においても東洋医学こそ主治医の選定を慎重に行うことが大切かと考えます。

その他

35歳以上の女性の方、不妊に悩まれた期間が3年以上に及ぶ方は西洋医学のみの治療法ではなかなか妊娠に至らないケースが多いです。焦る必要はありませんが、ぜひ漢方薬によるアプローチを早期に一度お試しいただければと思います。

中国の医学書『黄帝内経・素問』によれば、女性の身体は7の倍数で変化すると書かれています。「女性は14歳で月経が始まり子どもを産めるようになり、21歳で成長が完成する。28歳で最盛期を迎え、35歳を過ぎれば体力が衰え始め、42歳を超えるとさらに老化が進み、49歳ではもはや子どもは産めない」と記されています。

科学が進み、どれほど最先端医学に特化した時代を迎えようとも、人の身体の基本はさほど大きく変わらない事実が、この約2千年の月日を超えた書物からも伝わってきます。つまるところ、同時代に生まれた漢方薬、針灸の治療法が現代の医学にそぐわないと考えること自体がナンセンスです。漢方や針灸の効能に対して懐疑的に感じられている方にこそ、一度、不妊症についての論文や報告書を詳しく調べてみていただければ幸いです。実際の不妊症治療の現場においては少なくとも、東洋医学は現代医学と双璧を成すほどの高い治療効果の実績を持ちます。針灸の介入は特に妊娠前に有益な影響をもたらすだけでなく、妊娠中の逆子や骨盤位の治療に用いられることも多くあります。女性ならではの疾患や身体の不調と針灸治療は古来より相性が良いことは広く知られています。

また漢方薬の効果は医療用と、サプリ感覚でドラッグストア等で入手できるような一般用薬とでは大きく異なります。中でも薬の濃さはその差異が大きなものです。医療用の漢方薬や煎じ薬を正しく服用する方が、治療の確実性が高まることでしょう。

妊娠・出産は女性の一生において非常に大きな変化をもたらします。不妊症治療をお考えの方は、まずはぜひご自身の身体について正しい知識と理解を持って臨まれることを切に願います。確実性を増したい方は、自由診療においてもさまざまな治療法をご用意しておりますのでお気軽にご相談ください。

不妊で長くお悩みの方、ぜひ一度お気軽に当院にお越し下さい。当院では東洋医学のメッカである北里大学東洋医学総合研究所で研鑽を積んできた東洋医学専門医と鍼灸師が対応いたしております。

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